遍路旅 雑記帖

「遍路ころがし」について(前編)

2023年1月25日

今日は、四国八十八カ所の「遍路ころがし」についてお話します。現在、八十八カ所を歩き遍路で巡る場合、多くの札所は整備されてキレイな道路でつながっています。しかし、山奥の札所については、舗装道路では大きく迂回しなくてはならないため、必然的に昔ながらの未舗装路をたどる事になり、その中でも難所については「遍路ころがし」と呼ばれています(出会った方の中に、雨の日にころがされ、金剛杖を100m落下させたと言っていた方もおりました)。

13番・焼山寺に向かう途中に建つ「長戸庵」。

歩き遍路で1番・霊山寺からスタートすると、一般的な方であれば、二日間で約40kmを歩いて11番・藤井寺まで到着できると思います。この時までに十数カ所のお寺を巡ってくるので作法は身について来るのですが、体力的な部分がここから試されます(お遍路は修行ですね…)。11番・藤井寺から12番・焼山寺までが未舗装ルートとなり、昔から「一に焼山(11番)、二にお鶴(20番)、三に太龍(21番)」と言われる「遍路ころがし」で、その中でも焼山寺は上位に挙げられている所なのです。これだけ、騒がれるとどんな所か心配になる方もいるかもしれませんが、歩き遍路で行こうと思っている方の7割ぐらいは問題ないのではないかと思います。え、どうしてかって、1000km以上の道を(区切りで行くにしても)歩いてみようと思う人はなかなかの志の持ち主です。普通の人は歩いて行こうとは思いません。計画している時点でなかなかスゴイ事で、ある程度の体力に自身のある方(4割)と普通の体力のある方(3割)なのではないかと思われます(割合は結構適当・笑)。

同じく途中の「浄蓮庵」の一本杉には大師像が建つ。

問題は残り3割の体力に不安のある方です。焼山寺までの山中12kmはほぼ登山道で、迷うような危険な箇所は少ないのですが、650m近い高低差を歩き切れるかがカギになります。また、焼山寺の後も3kmは下らないと一番近い宿には着きません。さあ、どうしましょうか…。ひとつはやはり山登りで自信をつけておくことをおススメします。東京近郊の方であれば高尾山などが身近にあるので、最初は舗装された表参道の1号路で練習して、慣れたら6号路や稲荷山コースなどでトレーニングするといいかもしれません。おすすめは、陣馬山から高尾山の縦走路です。こちらは17km近くあり、焼山寺へのルートのように尾根道を歩くため適度にアップダウンがあります。ここを歩くことができればなかなかなモノですね(新緑のシーズンは京王電鉄でスタンプハイクの催しがあります)。

もうひとつは秩父三十四観音を歩き遍路する事をおススメします。こちらは6日ほどで巡ることができ、中盤の25番奥の院に行くために少し山の中に入り、32番の途中で簡単な峠越えを行い、最後、34番で軽い山登りに近い峠越えがあります(少し登り詰めた破風山まで登ると良い景色)。こちらは山登りというよりは、遍路の作法と足腰を鍛えるうえで良いかと思います。

旗の間に秩父の名山・武甲山。

焼山寺へ向かう途中には「へんろころがし」のプレートがあり、「〇/6」で表されています。実際には6カ所のうち分からないところもありました。その中でキツイと感じたのは焼山寺手前の集落、舗装道路を横切った後に出てきた「6/6」です。最後まで気を抜かないようにしましょう。⇒焼山寺に着いた時はありがたい感じとともに、やっと着いたという脱力感もありました。

13番・焼山寺本堂。

あと、ある程度体力に自身のある方は、焼山寺を下った鍋岩の先から玉が峠のルートに行くことをおススメします。ポイントとしては、切り通して作られた玉が峠の先の庵が風情がある点とその後の下り坂で神山町の美しい景色が眺められる点です。ただ、藤井寺から通しで歩く場合、ここの登りは夕方になり、「6/6」よりもきつく感じます。右側の沢沿いに進まずに左上を目指しましょう(四国で途中同行した"バタンキュー21氏"は夕方こちらでコースアウトして神山温泉に向かうという苦い経験があります)。季節によっては落ち葉や倒木があったりするので山中はやはり注意ですね。

玉が峠。

玉が峠庵。

⇒後編

-遍路旅, 雑記帖

© 2024 ひかり たび Powered by AFFINGER5